Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
占めた、と引返しながら見ると、小高いからずっと見渡される、いや夥しい、畦が十文字に組違った処は残らず瀬になって水音を立てていた。
早や暗くなって、この田圃にただ一人の筈の、あの人の影が見えない。
浜で手鍋の時なんかは、調子に乗って、
(お房さん。)
と呼んだりしたが、もう真になって、
(夫人!)
と慌てて呼んだ。
(はーい。)と云う、厭に寂しい。
声を便りに駈戻って、蘆がくれなのを勇んで誘い、
(大丈夫行かれます。早くしましょう、暗くなりますから。)
誰も落着いてはいないのを、汝が周章てて捲立てて、それから、水にかかると、あの人が、また渡るのか、とも言わないで、踏込んでくれたんだ。
路もどうやら広いから、なお力になる。押並んで急いだがね。浅くて一面だから、見た処は沼の真中へ立った姿で、何だか幻の中を行く、天の川でも渡るようで、その時ふとまた美い色が、薄濁った水に映った――」
小松原は歯を噛んで言渋ったが、
(先方でも、手を出した……それを曳こうと思った時……
私はぎょっとした。
つい目の前を、足に絡んだ水よりは色の濃い、重っくるしい底力のあるのが、一筋、褐色の鱗を立ててのたっているのが、向う岸の松原で、くっきりと際立って、橋の形が顕れたんだ。