Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
三
「開けて下さい。」
と言ったのに応じて、唯今、と直ぐに答えたのであるが、扉の事だろう? その外廊下に、何の沙汰も聞えないは、待て、そこではなさそう。
「他に開ける処と言っては、窓だが、」
さてはまさしく魘された? この夜更けに、男が一人寝た部屋を、庭から覗込んで、窓を開けて、と言う婦はあるまい。
いや、無いとも限らん――有れば急病人の許から駈着けて、門を敲いても、内で寝入込んで、車夫をはじめ、玄関でも起さない処から、等閑な田舎の構、どこか垣の隙間から自由に入って来て、直ぐに脊伸で覗いた奴。
かとも思ったが、どちらを視めても、何も居らず、どこに窓らしい薄明りも射さなければ、一間開放した筈の、帷の戦ぎも見えぬ。
カタリとも言わず……あまつさえ西洋室の、ひしとあり、寂として、芬と、脳へ染る、強い、湿っぽい、重くるしい薬の匂が、形ある箔のように颯と来て、時にヒイヤリと寝台を包む。
三
渠は、今更ながら、しとど冷汗になったのを知った。
窓を開けたままで寝ると、夜気に襲われ、胸苦しいは間々ある習で。どうかすると、青い顔が幾つも重って、隙間から差覗いて、ベソを掻いたり、ニタニタと笑ったり、キキと鳴声を立てたり、その中には鼠も居る。