Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

と惧れ、恐れていたことが、いよいよ実現しようとしているのだ。あの、この世に咲いた、最も美しき花「葉子」、命よりも愛し恋うた「葉子」――それが、むざむざと見知らぬ男の、好色な腕にシッカリ抱かれようというのだ。

(成るほど、俺は不具だ、おまけに醜男だ……)

ダガ、醜男は生れつき――かつて、葉子はその醜男の黒吉と、堅い固い約束をしたではないか、そして、幼なくして、早くも「女」を教えてくれたのは、葉子ではなかったか――。不具だって、いってみれば、葉子と別れるのがつらさに、曲馬団の解散を惧れて、「明日」を覗こうとして失敗した為なんだ――。

臆病な「虫」といわれていた黒吉を、ともかく曲馬団の花形としたのも「葉子」母を知らぬ黒吉に、最初の女性の優し味を与えてくれたのも「葉子」。そして最初の恋も、最初の接吻も……すべて黒吉の周囲から「葉子」を切り離しては考えられないのだ。

そして又、いまは、最初の、泪の「失恋」を彼女から与えられようとしている……。

思っただけでも、ゾッと鳥肌が立つほど恐ろしかった。

何故、こんなことを考えなければならないのか――それが怖かった。