Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

五ノ三

(まあいいや、俺は本当に、葉ちゃんの事ばかり考えているんだから)

途端に、一休みしていたジンタが、あの耳馴れた狂燥を、響かせて来た。

(もう開場だな)

彼は、ぽん、と一つ、腿を叩くと、ざわざわと伝わって来た観客の足音を、聴きながら

(さあ、支度だ)

口の中で呟いて、腰かけていた衣裳箱から立ち上った。

「黒ちゃん」

おやっ、と振返ると、葉子が、何故か珍らしく緊張した顔をして、駈けて来た。

「大変よ、黒ちゃん。あんただけ来ないんで、親方怒ってるわ」

五ノ三

「何さ、一体――」

「何さ、じゃないわよ。大変よ。親方のねエ、あの指輪知ってるでしょう。いつも嵌めている金のさ。あれがないんですって、確かにさっきまであったんだから、小屋の中で落したに違いないっていうのよ。開場る前に捜さなきゃ、きっとなくなって仕舞うわ――、今まで皆んなで血眼になっていたのよ。

そこへあんただけ来ないんだもの、親方、面白くないらしいわ……。

だけど、どうしてもないもんだから、親方、ぷんぷんしちまってね、到頭いま開場たの、あんたすぐいって見た方が、いいわよ」

「そんなことをいったって、誰も呼びに来ないじゃないか、解りやしないよ――」