Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

「君、僕はこの気分が、たまらなく好きなんだよ、誰になんといわれようと、そんなことは、平気なもんさ、見たまえこのなんにも見えなかった乾版から、景色でも、顔でも……ソラこういう風に、影のように出てくるだろう、僕にはこの気持がぞくぞくするほど、たまらなく嬉しいんだ。

このなんにも見えない乾版から、今度は何が出て来るだろう、と思う時の軽い(そして快よい)興奮は、君にも充分わかってもらえると思うよ。

遠うに忘れちまった顔でも、皺一本違わずに、恐ろしいほど正確に、現われてくるじゃないか……写真は五官を超越した神秘が、美しく絵を形造っているんだ。僕はこの写真というもんに溺れ切てしまった自分自身を、却ってトテモ幸福なやつだと思っているよ」

そう呟くようにいっている水木の蒼白い顔は、赤燈の光りを吸って、脳溢血患者のような、無気味な色になって闇に浮出し、あの、真赤な脣はここでは寧ろ緑色にさえ見えるのだった。

――だが、そうして寺田も、この現像の操作を見ている中、あの滑々とした乾版の片隅に、ぽつんと薄黒い汚点が浮くと急にそれが、乾版一杯に拡がって、不思議な映像を造ってゆく時の、あの何ともいえない期待に、強い魅力を感じ、幾枚かの現像を手伝っている中に、彼も何時か水木と同じように写真によって始めて、胸の引きしめられるような、陶酔