Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
「誰だい、君に女の友達が来ているとはしらなかった、……だけど、よく寝てるじゃないか」
「はッ、はッ、はッ」
水木はいきなり思いきった笑声で、部屋の空気を顫わせた。それは如何にも狂人のように不規則な、馬鹿高い哄笑だったので、洵吉は、思わずギクンとしながら、この女が眼を覚しはしないか、と心配したほどだった。
「寺田君、ヘンに誤解するなよ、この女は今日、タッタ今、逢ったばかりなんだぜ。……よく見ろよ、死んでるんだ――」
洵吉は、その思いもかけぬ言葉と、緊張に歪んだ水木の奇怪な容貌に押されて、も少しで買って来たばかりの乾版を、取り落してしまうところだった。
「驚かなくてもいいよ。この女は行商の女さ、……生憎君がいなかったんで、一人でやっちまったよ」
そういわれた時、彼は、あの玄関にあった地下足袋のコハゼを思い出した。
――それにしても恐ろしいのは、水木の巧妙な話術と、不思議に人を引きつける彼の魅力だ。洵吉の知っているだけでも大分前のことだが、あの踊子の花形である小川鳥子を、たった二日三日口説いて、全裸体の写真を撮らせ、今又この行商の女を巧みに誘上げて(まさか玄関で殺ったのではないだろう)殺してしまったのだ。