Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
いや現に、洵吉自身ですら、タッタ一度、二三時間の訪問で、すっかり水木の捕虜となり、彼の意のままに、奇怪な写真の創造に欣々と、従う一個の傀儡となってしまっているではないか……。
ぼんやりと彳んだ洵吉は、考えるともなく、そんなことを思浮べてみた。けれど、
「さ、寺田君手伝ってくれたまえ……」
そう耳元でいう水木の声に、ハッと気がつくと、もう今までの考えは、煙のように、どこへともなく揮発して、
「玄関にあんな足袋があると変だから、片づけなきゃいけないね……」
そんな悪智慧をすら浮べる、彼だったのだ。
六
それから洵吉は、水木のいう儘に手伝ってその投出された行商娘の、襦袢まで剥ぎとってしまうと、スタジオの隣の物置にあった、大きな硝子箱(寺田は、前からこんなものがあるのは知っていたが、何に使うのか見当もつかなかった)を選び出して、彼女の死を、まるでこわれ物でも扱うように、そっとその中に寝かした。
そして蓋の硝子を閉め、縁をパテで詰めてしまうと、もう一遍、つくづくと彼女の、赤裸な姿体を見直してみた。
硝子の箱の中に、のびのびと寝かされた彼女の様子は、まるで人魚の氷漬のように見事なものであった。