Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
なのがありますからね、とは圭さんの笑いながらの話だけれどそんな意味ばかりでなく、中野は望遠鏡をのぞくのが好きだった。
たかが地上望遠鏡で、口径の小さい、倍率の低いものだったけれど、それでもこんな簡単な筒を通して見るだけで、肉眼では見えない向うの世界が手にとるように、引寄せられるというのが楽しかった。何か、人の知らないものを、自分だけこっそり楽しむという慾望が人間にあるのなら、望遠鏡は、たしかにその一つを味わわせてくれる機械である。
――岬の方にも、変った様子はなかった。釣りのかえりらしい男の歩いているのが見えたが、その魚籠のなかは、いくら見ても空ッぽらしかった。
が、望遠鏡の向きをかえよう、とした時だ。ふと岩蔭の窪みに、見馴れぬ船が舫っているのに気づいた。十噸ぐらいの白色に塗られたスマートな船だ。
その岩蔭のあたりは、碧味をもった深淵になっていて、その位の船は、悠々つけられるのは知っていたが、船のあるのを見たのは今日がはじめてである。
その船も、この辺ではついぞ見かけぬ船のようだ。岩蔭に、半分以上かくれているので船尾の船名は見えなかったけれど、見るからにスピードの出そうな、近代的な流線型の船首が、ゆっくりと波にゆられていた。