Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

――あいもかわらぬサナトリウムの日課が始まったのである。

六時起床、検温。七時朝食。九時――十一時(隔日)に診察。十二時検温、昼食。三時まで午睡。三時検温。五時半夕食。八時検温。九時消燈……。

この外に、なんにもすることがないのであった。恐らくこのサナトリウム建設以前からのしきたりであるかのように、その日課は確実に繰返されていた。

私はベッドに半身を起して、窓越しに花壇一杯に咲乱れた、物凄く色鮮やかなダリヤの赤黒い葩を見ながら、体温計を習慣的に脇の下に挟んだ。ヒンヤリとした水銀柱の感触と一緒に、何ヶ月か前の入院の日を思い出した。

それは、まだ入院したばかりで、何も様子のわからなかった私が、所在なくベッドに寝ていると見習看護婦の雪ちゃんが廻って来て、いきなり脇の下に体温計を突込み、あっと驚いた瞬間、脇毛が二三本からんで抜けて来た時の痛かったこと……雪ちゃんの複雑な呻きに似た声と、パッと赤らんだ顔……

(ふっ、ふっ、ふっ……)

なんだか、溜らなく可笑しくなって来て、思わず体がゆれると、体温計の先が脇窩の中を、あっちこっちつつき廻った。

「ご気嫌ね……オハヨウ――」