Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
――そんな莫迦な事をするより、例え短かくとも、夜が明けるまで、こうして葉ちゃんの、ふくよかな肩の感触を恣にした方が、どれ程気が利いていることか……)
黒吉の心の中の、内気な半面が、こう囁いた。
彼は、蒲団にかけた手を、又静かに戻して仕舞うと、今度は、全身の注意を、細かに砕いて、彼女の方へぴったり、摺り寄って行った。そして、温もりに混った、彼女の穏やかな心臓の響きを、肩の辺に聴いていた……。
フト、冷めたい風を感じて、何時の間にかつぶっていた眼を明けて見ると、あたりには極くうっすらと、光が射しているのに、気がついた。
(もう夜明けかな――いつの間に寝て仕舞ったんだろう)
それと一緒に、思わずガクンと体の顫えるような、口惜しさに似た後悔を感じた。
(葉ちゃんは……)
黒吉は、先ずそれが心懸りだったので、ぐっと頸を廻して隣りを確めようとした。
(おや……)
彼の眼に這入ったのは、葉子より先きに、キンと澄み切った、尖った月の半分だった。
急拵えの小屋の天幕は、夕方の大暴風雨に吹きまくられてぽっかり夜空に口を開け、恰度そこから、のり出すように月が覗き込み、地底のようにシンと澱んだ小屋の中に白々とした、絹糸のような、光を撒いているのだ。