Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
そして苦汁は軽く揮発して行った。
「いい事って、何さ」
葉子は尚も、足を振り続けた。或は故意に――と思われる程、体と体が、劇しくぶつかる事もあった。その度に、黒吉の固くなった心は、音もなく、融けて行くのだ。
「いい事ってね、あんた芸が下手じゃ駄目よ、親方には嫌われるし、皆んなは莫迦にするし」
葉子は、姉さんのような事をいった。
「うん」
「だからあたしいい事聞いたの。あんた本当に一生懸命やるつもりあって」
「やるとも、葉ちゃんと一緒にやるのかい」
「いいえ、一緒じゃないわ……けど、とっても六ヶ敷い芸なの、今は誰もしないわ、せんに源二郎爺さんが、若い時にやったきりですって、それが出来りゃ親方だって、大事にするわ」
「うん」
「ほんとに出来たら、二人でしましょうか、親方に頼んで……」
「ああ、そうしよう、でなきゃつまんないや。でも、どんなことだい」
黒吉は、すっかり朗らかになっていた。昨日までの、じめじめとした気持を、いかにも少年らしく、すっぽりと、脱ぎ棄てて仕舞って、太陽のように笑いたい気持だった。
下では、源二郎爺が、ゆうべの雨で濡れて仕舞った、座蒲団を干しながら、ふと上を見上げると、小屋の屋根で、少女花形の葉子と、「虫」