Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
四ノ三
その綱の先きには、蜘蛛の巣のように張り廻らされた丸太の間から、源平織りにされた綱で、如何にも曲馬団らしい簡単なブランコが、一つずつ吊されていた。
観客が、そんな事を見ている中に、もう身軽な二人は、銘々ブランコまで登りついていた。それと同時に、屋根裏の助手が、登って来た綱を、大急ぎで捲上げ、遙か下の舞台ではピエロに扮した仙次の、物馴れた口上が、この小屋の空間に相当な距離を置いて吊された二人の間へも、途切れ途切れに聴えて来た。
四ノ三
「え――皆様……この度命がけの大冒険……ブランコからブランコへ飛移り……あの美しき少女が首尾よく受取りましたら、御手拍手……とござアい」
その途切れ途切れの口上を聴きながら、黒吉は遙か下の舞台を覗下すと、ピエロの仙次は、可笑しな身ぶりに、愛嬌をふり撒き、代って救助網を持った小屋掛人足が、意気な法被を着て三人ばかり出て来るところだった。
黒吉は、思わず掌に浮いた脂汗を、迭る迭る肉襦袢の腿の辺に、こすりつけた。
(落ちたら最後だ)
救助網なんかは、勿論名のみのものだった。この物々しさは、黒吉にとって、大した役にはたたなくとも、観客の心をエキサイトするには、充分効果的だった。