Japanische Klassiker mit Furigana
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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Lesen Sie 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 151.120 Zeichen · 302 Bildschirme
「あたしの顔を?」
「うん、それが、空を飛ぶ時なんだ、あのブランコでさ。まぼろしっていうんかしら」
「まあ、あんな時。あたしなんか一生懸命で、なんにも考えることなんか出来ないわ」
「そりゃ俺だって夢中さ。だけど眼の前に、ぽーっと浮ぶんだよ。だから、変だなア、っていったんだ」
「へんなの。……あたしどんな顔していて? そんとき――」
如何にも女の子らしい質問だった。黒吉は体を捻って、葉子の顔を覗き込みながら
「こういう顔さ。肌は雪のように白く、漆のような眼に、椿の葩よりも紅く可愛いい唇で……」
黒吉は、知っている限りの美文を並べると、「靨が指先きを吸込むように……」
そういって、彼女のふくよかな頬を、指でつついた。
「いたい――わよ」
葉子は、大袈裟に顔を顰めると、それでも、嬉しそうに、クックックッと笑った。
「この綺麗な顔が、俺の頭を占領しちまったらしい」
黒吉は、又、わざと真面目な顔をしながら、続けた。
「しらないわよ。おだてたって駄目よ」
そういうと、葉子は、笑いながら舞台の方へ駈けていって仕舞った。
黒吉は、薄く笑って、葉子の、駈ける度にぷかぷかと跳ねる断髪の背後姿を、見詰めていたが、葉子の姿が、しきりの幕に、隠れて仕舞うと同時に、又頭の中に拡がって来たのはあの奇怪な、幻影の事だった。