Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme
見るから冷たそうな青い火がちろちろと揺れると共に、若い女の姿がまぼろしのように浮きあがった。頽れた島田のおくれ毛が白い顔に振りかぶって、菊の模様の振袖を着ている女――それがお菊であることを播磨はすぐに知った。世間に伝えられる皿屋敷の幽霊を彼は今夜初めて見たのであった。
「菊」と、彼は縁先へ出て声をかけた。
鬼火は又消えたが、お菊の立姿はまだそこに迷っていた。播磨は再び呼んだ。
「菊。顔を見せい」
幽霊は静かに顔をあげた。それは生きている時とちっとも変わらないお菊の美しい顔であった。怨みも妬みも呪いも知らないような、美しい清らかな顔であった。播磨は思わずほほえまれた。
「菊。播磨も今行くぞ」
女の顔にも薄い笑みが浮んだようにも見えたが、今ひとしきり強く吹き寄せた風に煽られて、柳の糸の乱れる蔭にまぼろしの姿も隠されてしまった。雨はしぶくように降って来た。
お菊の魂は自分を怨んでいない。こう思うと、播磨は俄かに力強くなった。彼は勇ましい声で十太夫と権次とを呼んだ。そうして、自分が切腹の覚悟を打明けた。
「播磨は今夜切腹する。十太夫は介錯の役目滞りなく致した上で、この一通を支配頭屋敷へ持参いたせ。