Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
主上へは、よそながら後日にでもよろしく御奏聞おきを」
と、理由もいわずに、元の道へ蹌々ともどってしまった。――親光ほどな侍さえ臆病風か? と口惜しがらぬ者はなかった。
瀬田口は依然としている。諸所の守りで官軍は破れたが、ここのみは頑強だった。
「師泰」
と、直義はいま呼んだ。猛攻まる二昼夜の号令に喉もつぶれた声である。
副将の高ノ師泰も疲れきッた姿だった。すぐそれへ来たが、直義が黙然とただ戦線をにらんでいるので、彼も腕ぐみを共にしばらく側に突っ立っていた。
戦線は瀬田川の川床だった。上流は石山寺辺りから湖水口へかけてまで、折々にわあッと喊声をあげている。
だがまだ、一騎も対岸へ駈け渡ってはいない。
無数な人馬の屍は、河中の張り縄や乱杭にひッかかったまま水に洗われており、橋板のない大橋の上にも矢に仆れた味方の死者が、あえなく橋ゲタに伏したり、ブラ下がって、水面に落ちかかッている。――それさえ収容できぬほど、対岸の高矢櫓や出矢櫓の弓陣は、進み出る人影さえ見れば、どっと、矢の乱射を集中してくるのだった。
「師泰。どうかならんか。何かよい策はないか、何か……」