Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
第五列
首都占領の優位も、大軍勢も、その点では、無条件に楽観してはいられなかった。
「円心。播磨船はまだか。糧米輸送の見込みはどうだの?」
尊氏は、赤松円心を見るたびにこう訊かぬ日はない。
昨今、山陽道は杜絶していた。楠木の別動隊が淀の水路や河内、摂津口をさまたげているためだという。――先に細川定禅の軍を三井寺へやっておいたのも、近江口の糧道抑えが一つの目的だったのだが、瀬田ノ大橋は破壊され、湖上の輸送はなおままならない。そしていまやこの焦土の洛中なのだ。日々数万の兵が糞するほどな食糧が残されているはずもなく、
「はて、負ければさんざん、勝ってもこの餓鬼のすがた。とかく、戦とは、難しいことがいろいろ起るものだ」
と、尊氏はつらつら痛感していた。――それでも数万の兵が何とか食っているからだった。そのかわりあらゆる軍の悪に目をつぶっていなければならないのである。彼にはそれが自分の悪行みたいにつらく見えた。
そして彼のあたまは、朝夕、本陣の床几の前に据えられる敵将の首を見るなどよりも、どうしてもほかへ熱意をひかれていた。わけていま、彼が求めていたのは、性急な戦果ではなかった。