Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
黒い紅葉
今暁。それは十月にはいったばかりのこと。
彼にひきいられた一軍は、血と泥と疲労にまみれた惨烈なかたまりをなして、瀬田方面から逢坂をこえてきた。――近江で大勝したのである。――だが、兵は凱歌にわく気力もなかった。
鮒と芋ガラと粟とをかきまぜた雑炊ともいえぬ妙なものを暗いうちにススりあっただけなのだ。あかるくなった膳所の辺では、蓮池を見かけて、われがちに蓮根をひきぬき、それを生でかじりかじり歩いたりした。
おおむね、勝てば勝ったところに敵産があり、かならず腹ぐらいは満たされたものだが、いまどきは、どこへ行っても一物すらない。食えるのは持っている馬ぐらいなものだが、それは敵の死馬でもかたく禁じられていた。もしゆるせば数万の餓兵である。味方の馬をも食いつくしてしまわないとはかぎらない。
「がつがつするな」
直義は、言った。
「そのために、近江路の敵を追っぱらい、ことごとく、湖へ叩きこんだり、みなごろしにして来たのだ。――糧道の一つはあすから開ける。――佐々木道誉、斯波高経らが、あとにあって、東海の糧米を、やがてどしどし輸送して来よう。これで洛中の士気はいちばい高まる」