Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
勾当の内侍
その二月二十九日。
都では、改元の令があった。爾今、年号を、
延元
と改められ、前ノ大納言花山院亭の仮内裏では、発布の神事がおこなわれていた。また同日を期して、このたびの大戦大勝の賀をのべる貴顕の馬やら車やらが混み合って、三条洞院の四ツ辻に、仕丁たちの間で“くるま喧嘩”が起るほどな騒ぎだった。
やれ、車をぶつけたとか。
車のあるじが礼を欠いたとか。
車副の侍から、牛飼の童まで、みな気が立っているのである。そしてみな戦勝の驕りに酔っているのでもある。
なにしろ、尊氏の筑紫隠れは、大きな反映をこの洛中へ投じていた。それを「尊氏退散」とさえいって、ふたたび、花の都が地に降りたような景観を俄にしていたのだった。
しかし、ほんとの姿にはまだまだ遠く、いたるところは焼け跡だらけな洛内なのだ。――その中へ過日来の兵庫からの凱旋軍が、何万となく入りこんで、各※(二の字点、1-2-22)勝手屯に、空地や空館を占めてごッたがえしているし、日が暮れると婦女子は一人で歩けぬような戦勝の都である。――だが内裏へ参内するほどな人々は、公卿といわず、武将といわず、相見るたびにこう祝福しあっていた。