Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
その常軌のワクにしばられている兄へ、弟はなおさら果敢だった。
「そこがあなたの頭がどうかしている所だ。兄者を待つ窮地とは京都のことでしかない。そんな危地へわれらの棟梁をやってはならん。断じて、上洛は阻止すべきだと、一族どもは寄り寄り憂えているのですぞ。その憂いを負って、私は勅使にきっぱりとお断りを呈したまでだ。それが何で兄者を陥すことか!」
「ああ、きさまもまだ依然むかしのままな青侍だったか。浅慮者めがッ。これでまず九仭の功も一簣に欠いてしもうたわ。思えば、きさまの如き無謀小才なやつを大望の片腕とたのんだなどがすでに尊氏のあやまりだった。返す返すも残念な」
尊氏は一歩自分を内省に退いている。ここで弟と争ったら全足利党は真二つに割れる。必死にことばを抑えている風なのだ。が、直義にはそれも弟への揶揄に聞えた。
「これやおかしい。すべてを直義の小才や無謀のせいになさるが、兄者はどうだ! その兄者はもう公卿風の毒に魅せられて、苦難の大業よりは、いまの栄位に小さく安んじていたいのだろう。大望に魁て死んだやからこそ不愍なものだ。幾多の将士の白骨は浮かばれもしまい」