Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「では、新田の本陣は?」
「義貞のおる所は、丘のすそから、和田ノ岬との、ちょうど真ん中」
「二本松」
「お。彼処を二本松と呼ぶか。……あのあたりに燦々と見ゆる大軍こそ彼の床几場。……しかし総大将たる義貞が低地に陣して、なぜ一部将にすぎぬ正成が、全戦場を下に、最も大事な、高地に兵を布いているのか。……それが分らん。あれだけは“紛れ”の計とも思えぬが?」
海は吠えた。舷を叩いてわめく。陸地の敵も鬨をあわせて吠え返す。
しかし、陸上の騎馬歩兵が、弓弦を並べて待ちかまえると、海上の船列はあざけるように敵を外らして、その舳艫を東へ東へ、移動して行ってしまう――
すると浜べの敵影も、波打ちぎわを伝ッて、追ッ駈け追っ駈け、罵った。
海は嘲笑う。陸は怒る。
どこも白沙青松だ。そして渚は長い。寄手は好む所へいつでも敵前上陸を敢行できる。だからあせる要はない。岸をさぐりさぐり、敵を揶揄し、翻弄し抜いている。
すべて、尊氏の指揮だった。――味方の山手隊、街道隊、浜べ隊の進み工合と睨みあわせていたのである。かくて駒ヶ林をひだりに、刈藻川の川尻沖まで来ると、時刻は辰ノ刻(午前八時)になっていた。