Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
「はて、介はどうしたのだ。介はまだ見えんではないか」
その右馬介は、彼の命で、とうに沖あいからひとり本船を抜けてどこへともなく姿を消しており、その行く先は大殿のほか誰が知りましょうや――と賢俊は思った。そしてなにか口に出しかけたが、
「五郎っ」
そのときまた、尊氏は、旗本の一人へむかい、こう高い木のこずえを仰いで命じていた。
「あれへのぼって、物見いたせ。とくに会下山の方をよく見い。すでに、かしこには菊水の一旒もさっきから見えぬと申すことだったが、なおそのとおりか。さなくば、楠木勢はいまどこにあるか」
「はっ」
と、畠山五郎は木の根へ駈けた。そしてその敏捷なすがたが、高い枯れ木の天ッぺんへよじのぼって行くのにひかれて、ついみな顔を空にしていた。
するとその耳もとへ、ド、ド、ド、ドッと迅い馬蹄のひびきが林間をつたわって来た。はっと一角の兵隊は反射的にそれへ立ちむかった。すぐ木の間がくれに見えた六、七騎の者は味方の士とはわかったが、口々からこれへ投げた声は、容易な急、容易なさけび方ではなかった。
「お備えに、抜かりはなきや」
「楠木勢五、六百騎、一団となって駈けまいりますぞ」