Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(七) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 330.262 Zeichen · 662 Bildschirme
こんなもの、あんなもの、観ずれば、夢ではないか。
ほんとの、よろこび、安住の境界、それはどこにもない。真実の光に浴せる人間らしい“道心”こそ、いまは欲しい。
だが、なんでもできる自分の位置でいながら、その“道心”に会って、すがすがと生きる道にはどうしても出られず、修羅六道の中の大御所と立てられている身を、さて、どうしようもなく、ついこう明け暮れ戦ッている自分だった。
おたすけください――
尊氏の心の底のものは、み仏へむかって、さけばずにいられなかったものだろう。――一切は、弟直義に譲ってよい。すでに、鎌倉を立ち、九州このかたも、直義へは、軍政、日常のおもなる権、あらましは彼にゆだねてあるが、このうえの名誉も栄花も俗世の果報はみんな彼にやりましょう。どうか弟の安穏をお守りください。……そしてこの尊氏へは、果報に更えて、なにとぞ、この餓鬼六道のあさましい住家から、ほんとうの人間のすみからしい安心の道へおみちびきくださいまし……。
こう願文のうえに自己の本心をさらけ出したときは、自然、そのわずかな間では、きっと尊氏の眼には、ぼうだと、掻き曇るばかりな涙がわいたことであろう。