Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「これしきのことに」
と、廉子はわざと、権大ノ局のほうへ叱った。
「みぐるしいうろたえなどしてなりましょうか。お上のそばにお仕えしているからには、わらわたちとて、いざといえば、打物を把ってお守りするぐらいな覚悟でなければなりませぬ」
ぜひなく、権大ノ局も小宰相も、そのまま艫の端で、御食の支度をつづけていたが、追捕船から射て来る矢は、はや幾筋もそこらに刺さった。
もちろん、こなたでも、成田小三郎らが、舷に立ち並んで射返している。
それだけに気を奪われ、その一とき、廉子が童僕の金若の肩を抱くようにして、彼にいていた姿などは、誰も見ていないし、またそこは見えないような暗がりだった。
「そなたは、忠義者。……が、あの小宰相は、そなたも知ってであろうが、元々、鎌倉方の廻し者じゃ。帝のお為にならぬ悪い女子なのじゃ」
なお何を、※(「口+耳」、第3水準1-14-94)かれていたのだろうか。金若は眼をぎらぎらさせ、そして単純なうなずきを幾度もしていた。
それからまもなく、艫の端で「――ひいっ」という叫びが聞えた。権大ノ局もほとんど同時に「あっ?」といった。自分のすぐ後ろで御食の器を洗っていた小宰相の姿が、一瞬に見えなくなっていたからである。