Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
小宰相
かねて聞く後鳥羽法皇の崩られた遺跡はこのへんと思われるにつけ、お心ぼそさは一トしおだったにちがいない。――それというのは、渡島いらい、おやつれもない、むしろ埋め火となった覇気一ぱいな、ご健康ぶりでさえあったが、都万の漁村からこっちは、妃たちとも侍者とも船をべつにされ、海上は後醍醐おひとりであったからだ。
そして、その御船の艫には、見るからにひとくせありげな男が腰をかけていた。男は大太刀を佩から解き、杖のようにそれへ肩を凭せかけている。
ときおり船尻の幕が舞いあがると、帝の御座からその男のすがたが見えた。また男のけわしい顔も、きまって、その無作法な眼でジロと帝の御気配をねめすえているのであった。
「……?」
帝のお肌はなにかぞくとするようなものを男から感じた。殺気という眼はあれではないか。
「わしに害意をもっておるな」
皮膚が教える。
まもなく、別府へつくと、すぐお分りになったことだが、この男こそ、能登ノ介清秋であったのだ。
小宰相
後醍醐はゆうべ初めて、独り寝の夜を過ごされた。
国分寺の行宮には、妃のうちのたれかはきっと御寝に侍っていたが、ゆうべ荒磯の風のまッ暗なうちを、鬼火のような松明にみちびかれてきたこの別府の黒木のお小屋では、妃も侍者も、どこかべつな所へおかれたのだ。