Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

船上山

だから彼は世間がいつものような深夜でなかったことは疾く感づいていたはずだった。わけて昼には名和長年が来て心得がたい意を洩らしていたことでもある。思いあたらぬわけはない。

が、永観はいちど起きたもののまたすぐ寝所へ入った。それきり一刻もたったろうか。もうどことなく遠い喧騒やら炎のハゼる音までも耳をすませば聞えなくはない。それなのに彼は枕もうごかさなかった。

「ご隠居さま。一大事です」

やがて、家人の騒ぎにやっと永観はそこから出て来て、

「何っ、怪し火じゃと。誰ぞ、見てまいれ」

と、仰天を装って共に立ち騒ぎ出したものだった。

すぐ続々と知らせが来る。

「火災は丘の名和殿です」

「十棟の籾倉から物ノ具倉、母屋もはや炎でございまする」

「なお不審なのは、厩に馬もいず、女房方や童まで見えません」

なおそれ以前に、籾倉の食糧は、近村の老若が一荷一荷かついで山地へ運び去ったという風聞も聞えて来た。

「しゃッ、奇怪千万。そこらの百姓女房二、三人をひッからめて来い」

永観はさっそく、それらの里女房たちを取調べた。その結果、判明したところはこうだった。

まだ宵のころ。

領下の農家全般へ布令が廻った。