Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
以前の彼は、六波羅の猟犬だったが、兵学者時親に飼われてからは、予言者の咒文に指さされた人間のように、くるりと宮方へ転身してしまったのである。あの隠者なら、こういう男の向きを変えるなど、たやすいことだったにちがいない。けれど彼自身は、急に新鮮な働きがいを感じていた。古い権力への反抗は何かいさぎよいし、弱い陣をたすけ、正義を胸に持つなども、すべて彼の単純な侠気に合致するものだった。
「お役に立って」
と、功に誇る武者とは違って、その上、しごく謙遜しながら彼はいう。
「思わぬ途中の拾い物が、そんなおよろこびをいただくとは、てまえも飛んだ面目でございました」
「が大蔵。敵にとっては大事な秘図、味方にとっては致命的なものだ。どうしてこれが、きさまの手になど入ったのか」
正季の問いに、大蔵は旧部下の権三と出会ったことや、高札の一件などを、里ばなしに交ぜて、おかしく話しだした。
「ほう」
正成は、垢に埋ずんで皮膚も見えない顔に眼皺を描いて、にこにこ言った。
「のう正季。わしの首一つに、丹後一郡の賞がかけられたとは、誉れであるぞ。お汝の首には何も賭けられていないそうな」