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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

「これまでか」

と、自身、打物取って、敵中へ駈け入った。

丈六平や薬師堂の辺は、第二の防禦陣地だったが、そこもはや潰えている。寄手はもう勝手明神の境内へ突破して来て、「宮はどこ?」と、血まなこだった。宮の御首には、楠木以上な恩賞がかかっている。

宮は一たん、蔵王堂へひっ返して、蔵王桜に張りめぐらした大幕の蔭へ入り「別れの宴だ」と、有り合う杯をとって左右の武者と、三献まで酒をくみ交わした。そのさい武者のひとり木寺相模は「おさかなに」と血糊のついた太刀で“つるぎの舞”を舞ったという。何せいすでにお覚悟のていだった。

時に。――宮方の一将村上彦四郎義光が来て、切に、ご短慮をいさめ、宮を初めわが子義隆をも、たって南谷から天河方面へ落ちのびさせた。

そして彼は、二天門の上にのぼった。

落ちてゆく、宮やわが子の先途を、義光の眼がさがしていた。同時に自分の死所に安心したふうでもあった。犠牲の心に燃え、それに美化された一個の武者姿はふと人間の巷にはありえないものにみえた。そのうえ彼は宮のよろいを着、薄化粧までして「――大塔ノ宮一品の兵部卿尊仁はわれぞ」と呼ばわったので、楼門の下にむらがりよッた敵は、たれひとり疑わなかった。