Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
さしつかえなくば、ご病間でもいい、親しゅうお顔を拝したいが」
「あいや」
家臣たちの狼狽気味はありありだった。「……しばし、お待ちのほどを」とばかり、倉皇、奥へかくれてゆく。
ははん……。思った通りであったと思う。
高時にはうとまれるしで、とかく不遇な高氏だ。ここは冬眠をよそおって石垣の穴から首を出すまいとしているのだろう。それならそれで大いに話せる。こっちも伊吹の蛇ではある。
「が、さて。何と出てくるか」
道誉はだいぶ待ちしびれた。
だが、こう乗りこんできた以上、彼は高氏にあえて負目は感じていない。高時の寵はにぎっているし、また、京鎌倉の間の要地に、伊吹ノ城をも持っている。どっちへころんでも高氏は正面切ッてこの自分を敵には廻せないはずである……と、そのうぬ惚れは並ならぬ構えであった。
すると。ずしっ、ずしっと大きな跫音。つづいてすぐ、大書院の袖のあたりで、
「やあ、どうも、どうも」
と、ひどく馴れ馴れしいガラ声がひびいた。
来たな。
と感じたものの、それはどうもすこぶる不愉快な予感だった。それにまだ一度も会ったことはない人物に思われた。
入って来た男は、人間以前の人間の毛ぶかい痕跡を手の甲や耳の穴にまだ持っている四十がらみの侍だった。