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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

が、城中はしいんとしていた。

たったいま正成から、

「あわてるな。指揮をくだすまで、それぞれの部署にいて、勝手にうごくな」

と、やぐらの上から声があったばかりである。

「いいのですか?」

やぐら武者のひとり恩智満一が唾を呑むような声で、正成の横顔へ言った。満一は、爺の左近の子なのである。

「敵の顔一ツ一ツがよく見えます。そして断崖は土も見えません。全面、敵兵ばかりです。かまいませんか。おやかた」

「…………」

正成ものぞいている。

満一への返辞はなかった。

びゅッと、油くさい煙の尾がそばをかすめた。水をふくんだ縄ばたきを持った兵が近くに落ちた火箭をすぐたたき消している。正成は歩いて、ひがし足場の松尾季綱と、西足場の神宮寺正師、そのほかの塁へむかって、初めてこう号令した。

「火雨をあびせろ!」

それは火箭のような生やさしい物ではない。油ボロを芯に枯れ葉などを仕込んだ竹編みの火焔玉やら、投げ松明の類だった。たちまち、火を噴く活火山のように寄手の上へ降りそそぐ。

叫喚が起った。焦熱のうめきに山が揺れた。しかし猪突の敵は、体に煙を持ちながらでも迫ッてくる。城兵は、矢を射あびせ、もっと近い敵には、槍を投げた。