Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
それもただ鋭利な刃ものを棒のさきに植えた銛のようなものだった。
「樋の堰を切れ」
正成の第二の令がつたわると、次には、敵の坑道の上あたりから、どうどうと、数条の滝水が落ちてきた。
水は、籠城兵にとれば、生命の水だから、拝んで使っているほどだった。それをもいまは、あらんかぎりな埋め樋の水路を切って、一挙に敵の坑道口へむかって吐き捨てた。
また日ごろ蓄えておいた火焔玉も、ほかの崖全面の敵兵へぶり撒いた。総じて、この日の防戦には、千早の守りもその最終的な死力を出しつくしていたかにみえる。
けれど、正成の指揮ぶりには、その日も何らさしせまったふうはなかった。おそらくは、晩雲の冷風に、
「雨、近し」
と察して、さいご的な戦法をとったものと思われる。
それはともかく、地下坑道に充満していた敵のうろたえは想像もつかない惨状だったとおもわれる。坑道内の傾斜を泥の濁流が一瀉千里にながれて行ったことだろう。さらに坑口の一台地にいた軍勢も、投石や投木に打ちひしがれ、そこもほとんど全滅的な酸鼻だった。
また、どこかでは、わあっと、絶え間なしに、逃げ足がなだれ打ッて行く。いつか谷には薄暮がこめ、北谷の奥までも、断崖という断崖すべてもうもうと煙っていた。