Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
それはけっこうですけれど、負けて怒ったりなされてはいけませんね」
「だって、藤夜叉のは、いつも人をだますからさ。ただの勝ち方ならいいんだけれど」
「晩にはひとつ、この右馬がお相手つかまつりましょう。右馬を負かしたら、若ぎみもおえらいがな」
「きっとかい」
「はい」
「じゃあ、何を賭ける」
「何でもお賭けいたしまする」
「よし。藤夜叉なんかおもしろくない。右馬めを、きゅうきゅういわせるぞ」
「腕をさすって、晩の勝負をお待ちしましょう。ですから」
「ですから何だい?」
「少々、藤夜叉さまとここでおはなしがあるのです。若ぎみにも、大人のはなしなどはおもしろくありますまい」
「そうだ、弓の時刻だ。このごろは若党たちがちっとも的場に見えないけれど、わしひとりで弓の稽古をしていよう」
「おう、それはご立派なお心がけだ。右馬介もあとからお的場へ伺いまする。そして若ぎみの御習練ぶりを一つ拝見させていただきましょう」
「来る? きっとだね」
不知哉丸は、ひと間のうちへ入って、弓袋を解き、美しい弓を片手にすぐ庭へ駈けおりていた。そして北庭の的場の方へ走って行くその紫濃染めの小袴が遠くなるまで、ここの大人ふたりは、長い月日の感慨を胸の下地においてながめていた。