Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

嬲り返しに、今日はこの道誉を嬲ったものに相違ない」

「どうなとお取りなされ。仮病と見たら、君前へ、仮病と御披露あるもよし。……ただこちらとて、佐々木殿のお内輪事なら、聞いていないこともない」

「何」

「それは、遠い過去なれど、伊吹ノ城の茶堂で、わが殿へお洩らしあった一事もおざろう。……近くは、あなた様がさんざん追い廻した小右京ノ君からも、いろんな秘事を伺うておる」

「こやつ、何を」

鞍に挟んであった鞭を抜いて、道誉が馬上で振りかぶると、とっさに、師直も足もとに落ちていた棒切れを拾って、

「おや、ご立腹か」

「いわせておけば」

「わが殿は無口な質だが、この師直はいわずにゃ腹が癒えん質だ。六月十九日――伊吹の下で首となった源中納言具行も、虚空で歯がみをしているそうな。……それらも探り知らずにいる足利家とお思いか」

「しゃっ、この下郎っ」

鞭も唸ったが、より早く、師直は口輪の前を跳びのいて、その手にしていた棒切れで、いやというほど馬の尻を打っていた。

馬は驚いて、かたわらの溝川を跳び越え、そこの畑から道へ、狂奔に狂奔をつづけてゆき、やがて大町の辻の灯に、ようやく脚をゆるめていたが、どこへ振り落したものか、道誉の姿はなく、その背はいつか空鞍だった。