Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
とすれば、なまじ相見ぬほうが、父子いずれにも、いッそましではあるまいか。そこを迷うのだ、右馬」
すると、廊ノ間のほのぐらい簾の外に、人影がさした。ひとりは直義で「――兄者」と呼びかけるなり内へ入って、彼一人だけ遠くに坐った。
「兄者はあまり煩悩すぎる。お叱りは覚悟のもとに一存で連れまいりました。……ささ、不知哉丸こなたへ入れ。藤夜叉も入ってお会い申しあげたがよいわ」
「ならんっ、入れるな」
高氏は、とっさの大声で。
「いらざる扱いをするな直義、会うていいほどなら、何もそちの扱いには待たぬ」
「でも、藤夜叉といい、和子といい、余りに不びんではございませぬか」
「ふびん? わしの絆だ、そちにいわれるまではない。何はあれ、そこの簾をさかいに、廊より内へ二人を入れるな。しいて対面を求めるなら、高氏は座を立つぞ」
「こは兄者らしくもない」
と、直義はなお遠くで抗弁の肩を張った。いや後ろへ連れてきた母子に代り、非情な父、非情な男の、仕打ちを責めるかのようだ。
「今日にも、鎌倉の使いがあれば、質子として、引渡さねばならぬよしは、直義もさきに伺ってはおりまする。が、だからといって、父子の対面をせぬ方がいいとは、わけがわかりませぬ。