Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「なんの狂気していよう。ただこの身を、どうしてよいのやら分らぬことが狂おしい。殿やそなたばかりを恨まれもせぬ。……わが身にも深い科はある。それだけでも、死なねばならぬわけがある」
「去年の。……あの、高野川へお身を投げたそれ以前の?」
「訊いて給もるな」
とつぜん、彼女はまた、その泣き顔を深く埋めて。
「いえません。たれにもそれは話せません。ただ死ねば何事も白露と消えましょう。そして身も白骨になりさえすれば、どんな悪魔にも負けはしまい。あざ笑ってやれるでしょう。……でも、死ぬ前にはどうしても、いちど殿にこの胸の真実だけは訴えて知ッておいていただきたい。殿だって、会うぐらいは会ってくだすってもよいと思う。伊吹の春の……遠いむかし、初めて殿にお会いしたときのことを、殿もおわすれのはずはない」
めんめんと、糸のような恨みそのものが、彼女自身をなぐさめているようだった。が、そのとき障子の外で、誰かエヘンと二度ほど咳ばらいしたと思うと、がたと、そこが開きかけていた。
「一色どの。内か」
「お、どなたで」
「師直じゃ。あちらで、殿がお召しだ。直義さまもさがしておられる。