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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme

Aozora Bunko

師直は、つぶやいた。

「ともあれ師泰、申しつけたぞ。藤どのの身は、きさまに預ける。もし万一などあらば、兵のおこたりとはいわさん。科はきさまだ、よろしいか」

「これはきついご命令だが、かしこまってござるわ」

不承不承のようだが、足利家という野望の廂にいて、私の野望をひそかに燃やしている点では、主人以上な、似たもの兄弟なのである。師直は弟の舌打ちなど苦にもしていない。

彼は足を戻して、小部屋の内の藤夜叉へ、なにか気がるな声をかけた。そしてすぐ、せかせか急ぎ去ったが、もいちど、廊の曲がりで振向いた。

そのとき、師泰の連れてきた十名ほどな兵は、はや彼女の体を攫ッてでも行くようにかこんで柳堂の外へ連れ出していた。――とばかり見えて藤夜叉の顔も袂も見えなかった。

一室でいま、高氏は不知哉丸を見た。そばへよんで、しげしげとながめていた。

初めて見るのだ。

親として、十一年目に。

が、この子の父とはおもっても、実感にはなって来ない。

子の方でもまたそうなのだった。藤夜叉の姿が見えなくなったので、一時は泣いたが、なだめられ、いまはかえって、きょとんとしている。

父ぎみとの御対面のときにはこうと、おそらく、稽古さえしていたのだろう。