Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
「……もう朝か」
彼女には何か、自分の棺でも出す日の朝雲みたいに空いちめんも、むなしかった。――が急に、敏捷なひとみを持って、その影は、野兎にも似る迅さで梅の木のあいだを縫い、そして物見山の小高い所へのぼっていた。
まもなく、朝霧のやぶれをとおして、さんさんと、騎馬甲冑のながれが近くの目の下に望まれだした。一陣はいま矢倉門を出た佐々木勢の軍勢か。そして、おそらくは佐々木道誉を先頭に、高氏以下の者を、柏原の本軍のいるところまで、見送ろうとするのではあるまいか。
「どこに?」
彼女は高氏の姿ひとつを眸にさがした。男のすすんでゆく野望の道には、一人の女など路傍の花ほどでもなかったのだと、彼女は知った。それなのに彼女はなお男の行くてのけわしい道に幸あるようにと気を揉まずにいられなかった。そして抜け殻のような身を茫と祈りのなかにおいて或る観念にいやおうなく達してきたとき、初めて一すじの光を心のすみが見つけていた。