Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(四) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 229.324 Zeichen · 458 Bildschirme
小屋の地点も柵も三ヵ所わかれわかれに建っていた。内を覗いてみると昼もほの暗く、黒髪長やかな白い顔が何を打ち案じているか小机に倚っているのが、簾ごしに透いてみえる。文字どおりな籠の鳥。
黒木の御所を見廻るよりは、彼にはここを覗くことのほうが興ふかい。――三位ノ典侍廉子を見ては、豊麗な美女だがそろそろ年増だナと思い、権大納言ノ局をうかがっては、
「男と生れたからには、いちどはあんな女を」
と、いやしげな連想にふと相好をくずして行く。
しかし、もう一名の妃、小宰相の木の丸小屋へ来ると、ここでは彼の態度もがらりと変っていた。
「ほ。……お髪洗いかの」
と、知るべの家の縁にでも立ち寄ったように腰をおろして、片あぐらをすくい上げ、
「はやく都へ帰りたいことでおざろうな」
などと、世辞よく話しこむ。
三つの妃小屋のうち小宰相の囲いだけは、どこか警固がゆるやかだし、また何かと待遇などもちがっていた。
この典侍だけは、鎌倉方に気脈をつうじている女性と、さきに甲ノ尾の清高からも、内々の指示があったからである。
で、小宰相の方も、能登ノ介清秋を、こわらしい武者などと恐れてはいず、今も、櫛笥をとりかたづけて、すぐ濡れ縁へ寄っていた。