Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
見す見す閑地の外を迂廻して赤羽根の川端まで出て見るのも業腹だし、そうかといって通過ぎた酒屋の角まで立戻って坂を登り閑地の裏手へ廻って見るのも退儀である。そう思うほどこの閑地は広々としているのである。私たちはやむをえず閑地の一角に恩賜財団済生会とやらいう札を下げた門口を見付けて、用事あり気に其処から構内へ這入って見た。構内は往来から見たと同じように寂として、更に番人のいる様子も見えない。私たちは安心してずんずんと赤煉瓦の本家について迂廻しながらその裏手へ出てみると、僅か上下二筋の鉄条綱が引張ってあるばかりで、広々した閑地は正面に鬱々として老樹の生茂った辺から一帯に丘陵をなし、その麓には大きな池があって、男や子供が大勢釣竿を持ってわいわい騒いでいる意外な景気に興味百倍して、久米君は手早く夏羽織の裾と袂をからげるや否や身軽く鉄条綱の間をくぐって向へ出てしまった。私は生憎その日は学校の図書館から借出した重い書物の包を抱えていた上に、片手には例の蝙蝠傘を持っていた。そればかりでない。私の穿いていた藍縞仙台平の夏袴は死んだ父親の形見でいかほど胸高に締めてもとかくずるずると尻下りに引摺って来る。