Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
この道程もさほど遠いとも思わず初めの中は物珍しいのでかえって楽しかった。宮内省裏門の筋向なる兵営に沿うた土手の中腹に大きな榎があった。その頃その木蔭なる土手下の路傍に井戸があって夏冬ともに甘酒大福餅稲荷鮓飴湯なんぞ売るものがめいめい荷を卸して往来の人の休むのを待っていた。車力や馬方が多い時には五人も六人も休んで飯をくっている事もあった。これは竹橋の方から這入って来ると御城内代官町の通は歩くものにはそれほどに気がつかないが車を曳くものには限りも知れぬ長い坂になっていて、丁度この辺がその中途に当っているからである。東京の地勢はかくの如く漸次に麹町四谷の方へと高くなっているのである。夏の炎天には私も学校の帰途井戸の水で車力や馬方と共に手拭を絞って汗を拭き、土手の上に登って大榎の木蔭に休んだ。土手にはその時分から既に「昇ルベカラズ」の立札が付物になっていたが構わず登れば堀を隔てて遠く町が見える。かくの如き眺望は敢てここのみならず、外濠の松蔭から牛込小石川の高台を望むと同じく先ず東京中での絶景であろう。
私は錦町からの帰途桜田御門の方へ廻ったり九段の方へ出たりいろいろ遠廻りをして目新しい町を通って見るのが面白くてならなかった。