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Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし一年ばかりの後途中の光景にも少し飽きて来た頃私の家は再び小石川の旧宅に立戻る事になった。その夏始めて両国の水練場へ通いだしたので、今度は繁華の下町と大川筋との光景に一方ならぬ興を催すこととなった。

今日東京市中の散歩は私の身に取っては生れてから今日に至る過去の生涯に対する追憶の道を辿るに外ならない。これに加うるに日々昔ながらの名所古蹟を破却して行く時勢の変遷は市中の散歩に無常悲哀の寂しい詩趣を帯びさせる。およそ近世の文学に現れた荒廃の詩情を味おうとしたら埃及伊太利に赴かずとも現在の東京を歩むほど無残にも傷ましい思をさせる処はあるまい。今日看て過ぎた寺の門、昨日休んだ路傍の大樹もこの次再び来る時には必貸家か製造場になっているに違いないと思えば、それほど由緒のない建築もまたはそれほど年経ぬ樹木とても何とはなく奥床しくまた悲しく打仰がれるのである。

一体江戸名所には昔からそれほど誇るに足るべき風景も建築もある訳ではない。既に宝晋斎其角が『類柑子』にも「隅田川絶えず名に流れたれど加茂桂よりは賤しくして肩落したり。山並もあらばと願はし。目黒は物ふり山坂おもしろけれど果てしなくて水遠し、嵯峨に似てさみしからぬ風情なり。