Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
二階の一間の欄干だけには日が当るけれど、下座敷は茶の間も共に、外から這入ると人の顔さえちょっとは見分かぬほどの薄暗さ。厠へ出る縁先の小庭に至っては、日の目を見ぬ地面の湿け切っていること気味わるいばかりである。しかし先生はこの薄暗く湿った家をば、それがためにかえってなつかしく、如何にも浮世に遠く失敗した人の隠家らしい心持ちをさせる事を喜んでいる。石菖の水鉢を置いた子窓の下には朱の溜塗の鏡台がある。芸者が弘めをする時の手拭の包紙で腰張した壁の上には鬱金の包みを着た三味線が二梃かけてある。大きな如輪の長火鉢の傍にはきまって猫が寝ている。襖を越した次の座敷には薄暗い上にも更に薄暗い床の間に、極彩色の豊国の女姿が、石州流の生花のかげから、過ぎた時代の風俗を見せている。片隅には「命」という字を傘の形のように繋いだ赤い友禅の蒲団をかけた置炬燵。その後には二枚折の屏風に、今は大方故人となった役者や芸人の改名披露やおさらいの摺物を張った中に、田之助半四郎なぞの死絵二、三枚をも交ぜてある。彼が殊更に、この薄暗い妾宅をなつかしく思うのは、風鈴の音凉しき夏の夕よりも、虫の音冴ゆる夜長よりも、かえって底冷のする曇った冬の日の、どうやら雪にでもなりそうな暮方近く、この一間の置炬燵に猫を膝にしながら、所在なげに生欠伸をかみしめる時で