Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
三
「そういう妙な言葉は大抵東京にいる田舎者のこしらえた言葉だ。そういう言葉が流行するのは、昔から使い馴れた言葉のある事を知らない人間が多くなった結果だね。この頃の若い女はざっと雨が降ってくるのを見ても、あらしもよいの天気だとは言わない。低気圧だとか、暴風雨だとか言うよ。道をきくと、車夫のくせに、四辻の事を十字街だの、それから約一丁先だのと言うよ。ちょいと向の御稲荷さまなんていう事は知らないんだ。御話にゃならない。大工や植木屋で、仕事をしたことを全部完成ですと言った奴があるよ。銭勘定は会計、受取は請求というのだったな。」
唖々子の戯るるが如く、わたしはやがて女中に会計なるものを命じて、倶に陶然として鰻屋の二階を下りると、晩景から電車の通らない築地の街は、見渡すかぎり真白で、二人のさしかざす唐傘に雪のさらさらと響く音が耳につくほど静であった。わたしは一晩泊って行くように勧めたが、平素健脚を誇っている唖々子は「なに。」と言って、酔に乗じて本郷の家に帰るべく雪を踏んで築地橋の方へと歩いて行った。
三
同じ年の五月に、わたしがその年から数えて七年ほど前に書いた『三柏葉樹頭夜嵐』