Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme
人生看得幾清明 人生 看るを得るは幾清明ぞ〕
何如璋は明治の儒者文人の間には重んぜられた人であったと見え、その頃刊行せられた日本人の詩文集にして何氏の題字や序または評語を載せないものは殆どない。
わたくしが東京を去ったのは明治三十年の九月であったが、出帆の日もまた乗込んだ汽船の名も今は覚えていない。わたくしは両親よりも一歩先に横浜から船に乗り、そして神戸の港で、後から陸行して来られる両親を待合したのである。
船は荷積をするため二日二晩碇泊しているので、そのあいだに、わたくしは一人で京都大阪の名所を見歩き、生れて初めての旅行を娯しんだ。しかしその時の事は、大方忘れてしまった中に、一つ覚えているのは、文楽座で、後に摂津大掾になった越路太夫の、お俊伝兵衛を聴いたことだけである。
やがて船が長崎につくと、薄紫地の絽の長い服を着た商人らしい支那人が葉巻を啣えながら小舟に乗って父をたずねに来た。その頃長崎には汽船が横づけになるような波止場はなかった。わたくしは父を訪問しに来た支那人が帰りがけに船梯子を降りながら、サンパンと叫んで小舟を呼んだその声をきき、身は既に異郷にあるが如き一種言いがたい快感を覚えた事を今だに忘れ得ない。