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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうたく

荷風随筆集(下)〔全2冊〕

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.633 Zeichen · 74 Bildschirme

Aozora Bunko

鳩が来たから雪がふりましょうと言われた母の声までが、どこからともなく、かすかに聞えてくるような気がしてくる。

回想は現実の身を夢の世界につれて行き、渡ることのできない彼岸を望む時の絶望と悔恨との淵に人の身を投込む……。回想は歓喜と愁歎との両面を持っている謎の女神であろう。

○

七十になる日もだんだん近くなって来た。七十という醜い老人になるまで、わたくしは生きていなければならないのか知ら。そんな年まで生きていたくない。といって、今夜眼をつぶって眠れば、それがこの世の終だとなったなら、定めしわたくしは驚くだろう。悲しむだろう。

生きていたくもなければ、死にたくもない。この思いが毎日毎夜、わたくしの心の中に出没している雲の影である。わたくしの心は暗くもならず明くもならず、唯しんみりと黄昏れて行く雪の日の空に似ている。

日は必ず沈み、日は必ず尽きる。死はやがて晩かれ早かれ来ねばならぬ。

生きている中、わたくしの身に懐しかったものはさびしさであった。さびしさのあったばかりにわたくしの生涯には薄いながらにも色彩があった。死んだなら、死んでから後にも薄いながらに、わたくしは色彩がほしい。