Japanische Klassiker mit Furigana
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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
Lesen Sie 豊島与志雄童話集 (おつきさまのうた) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.569 Zeichen · 336 Bildschirme
王子は恐ろしくなって立ちすくみました。
そのうちに、今まで静かだった森が、ごーッごーッと底深い唸り声を立て始めました。その唸り声の間から、重い鈍い声が四方から王子へ呼びかけてきました。
「誰だ?」
「何しに来た?」
「どこの者だ?」
「どこへ行くのだ?」
「何者だ?」
王子は薄ら明りにきっと見廻しましたが、ただ声だけで何の姿も見えず、大きな木が化け物のように立ち並んでるだけでした。そして森全体はやはり、ごーッごーッと唸り続けていました。
王子は恐ろしさに震え上がりそうなのを、じっと押しこらえて、剣の柄を握りしめながら、一生懸命に叫び返してやりました。
「僕はこの山の下の城の王子だ。森の樫の木に逢いに来た。どこにいるのだ? 返事をしないか」
すると、「おーう」というほえるような声が一つ、森の唸り声の中から一際高く聞こえてきました。王子はもう命がけになって、その声の聞こえた方へ、茨や葛の中を踏み分けて進んでゆきました。
しばらく行くうちに、はるか向こうの方から、ぼーっと薄赤い光がさしてきました。王子はにわかに力強くなって、その光の方へ飛んで行きました。そして、あッ! と叫んだまま棒立ちになってしまいました。