Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme
佐八はおなかだということにすぐ感づいた。雨戸を閉める音でおなかだなと思い、それが少しも意外でないことに気づいて、却っておどろいたくらいであった。
――車坂の利助さんに訊いて来ました、とおなかは囁き声で云った。
――ああ、利助にはいろいろ世話になった。
――その話も聞きました、済みません、かんにんして下さい。
佐八は呻き声のもれるのを抑えるために、全身の力をふり絞った。彼は静かに起きあがって、行燈をひきよせた。すでに時刻でもあるし、表の雨戸を閉めたので、部屋の中は夜のように暗かったのだ。
――どうか灯をつけないで下さい。
おなかはそう云って泣きだした。
――かんにんして下さらないんですか。
――わからない、と佐八は呻くように云った。自分でもそこがわからない、けれども、生きていてくれてうれしかったとは思うよ。
――わけを聞いて下さいますか。
――おまえがつらくなければな。
おなかは沈黙した。嗚咽をしずめるためだったろう、暫くしてそっと洟をかみ、そうして、感情をころした平べったいような調子で語った。
彼女には約束した男があったのだ。山谷にいる父の友達の子で、親の家をとびだして来、同じ町内に住んで、大工の手間取りをしていた。