Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
私の太平記智識はそれの必要にせまられて急に傍系史料のなかに没しながら文学的整理や分解をやりはじめたていどのものでしかないのである。権威のある言は何ひとつ私にはくだすこともできないし私の能でもない。けれど自然雑感ならば私もいろいろいだく。まず何よりはさきに七年間ほど書いていた「新・平家物語」のその平家時代とくらべて、太平記の社会は、まったく人も社会も、一変した世代であったということだ。自分の太平記観はそれに根底をおいている。ひどくあたりまえなことみたいだが、一般読者層とよぶものの概念では、こんなわかりきったこともじつは、はなはだ模糊としているものらしい。五衣の女、直垂衣の男のさし絵だけで二百年の前もあともつい混同しやすいのである。いや小説でないこの古典をじかに読むひとにしても、一応は年表などで鎌倉以降の“承久の乱”とか“蒙古襲来”などの重要事項はあたまに入れておくぐらいな用意があっていいと思う。
新しい思想としての宋学風潮がいかに宮廷の若公卿たちの夢を性急にかりたてたか。そのくせ古い宮廷人はいぜん古い争いや陰謀に固執していたか。このへんの複雑さがよくのみこめないと太平記の社会は単なるてんやわんやにしか観られぬだろう。