Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
その七
「――菊水の菊は、菊の花でなく、山吹に流水を添えた山吹ノ紋だった」というのである。
もしほんとに、山家静かな里の瀬の山吹が、誤って武門に咲き、時潮に乗せられて、いつか菊の花となり、菊水となったのなら、それこそ正成という人を、真に象徴しているものかも知れない。奈良街道には、有名な井出ノ山吹があるし、ここの水分川やほかの瀬々にも、古くは山吹がたくさん咲いていたようだ。
建水分神社の宮司岡山氏が、私たちのため、雨傘を翳し添えて、石階数百段を木履で案内してくださる。楠木氏が水分の水利権を抑えていたのが、この地方に重きをなしていた重因であると観るのが、豊田氏の近説である。道に辷り、山坂の小雨しぶきに濡れながら、豊田氏の説にうなずく。
正成夫人、久子の生家の址を見て通る。この日、奥の金剛山は、雲煙につつまれ、赤坂城の址には、蜜柑畑のみどりが濃い。正成の屋敷址は、いまの千早赤坂小学校だ。山雨を避けて、校門へ駆け込む。蜂ノ子みたいな学生たちにワイワイ囲まれつつ、雨の小やみを待つ間、健吉画伯は、そこらの写生に他念もなかった。(三三・七・八)
その七
この一稿を挟んで、「菊水帖」