Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
その二十
またの筆間茶話の日にゆずるとしよう。(三五・五・七)
その二十
さて、原稿だが、今朝ほど困ったことはない。
一回分の余裕もないと社ではいう。私のあたまも「今日」の生身から俄に六百年前の「きのう」へ沈潜もしかねている。そこで少し気分が机に馴じむまで、この両回を「筆間茶話」とすることにした。ごかんべんねがいたい。
過日の“文化の日”を中心に、前後二十日余りはほとんど机におちつくまもなかった。テレビ、ラジオ、対談、講演依頼などは、日頃、この長篇仕事の終るまではと、一切あやまっていたのである。そこへあの発表だった。一時にどっとみそかの勘定書を持って来られたようなハメになり、ままよと自分も八方破れを取ッて、マスコミのどんな求めにでも応じてしまった。ひとつには、このたびの受賞は、読者から贈られたものとしての気持ちでもいただく、といったてまえ、読者へお答えする義務も感じていたからである。
NHKの“ここに鐘は鳴る”の番組へも、この春頃から、ぜひにと、すすめられてはいたが、あやまり通していたのである。自分の「忘れ残りの記」にもあるように、社会の敗北者であった両親の面影などをさらすのは不孝児がまた不孝をかさねるようなものでしかないと独り決めしていたからだった。