Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
というのが私の小説観でもあるが、いまの激しい三年という歳月は容易でない。正宗白鳥氏ではないが、私自身でさえ、時にはこんな歴史小説などをよくも、と惧れられもする。しかし読者は歴史の時点をいつも今日の自分の中において読んでいることは確かだと思う。近時の歴史書ブームの盛行をみてもそれはいえる。
衣冠そくたい、小袿衣、よろい直垂、などの風俗画的時代は、さぞかし、のん気なとも想像されるが、いま書いている後醍醐治下の、建武三年の正月などは、暮も元日もあったものではなかったのである。都は全土戦災、食糧は皆無、あしたも分らなかったのだ。わたくしたちには覚えがある。いやお互いもう忘れかけてはいないだろうか。
忘却は救いだが、愚のくりかえしは人間の業か疾病みたいなものである。「歴史とは人間の巨大な恨みに似ている」と小林秀雄氏は言ったが、太平記の全篇はまさに悲歌そのものだ。
ただ歴史のありがたい点は、動乱の結果にも、また人間それぞれの生涯にも帰するところの“答え”を出しておいてくれたことにある。今日も歴史だが、今日にはまだ答えが出てない。――読者は自分を読んでいる、といえる微妙な点なども要はこの辺にあるおもしろさかと思われる。